「モヒカン故郷に帰る」 「家族はつらいよ」  「キャロル」


 

 

モヒカン故郷に帰る

 

 

2016年 日本映画 125分 <予告編> 

 

 

監督・脚本:沖田修一 音楽:池永正二 主題歌:細野晴臣「MOHICAN」

 

 

出演:松田龍平/柄本明/前田敦子/もたいまさこ/千葉雄大

 

 

 

3月26日、TOHOシネマズ緑井で沖田修一監督と主演の松田龍平、前田敦子さんを迎えて舞台挨拶

 

付き先行上映にて、広島が舞台の映画『モヒカン故郷に帰る』を観ました。

 

主役二人の不思議な存在感にぴったりあう映画。モヒカン頭の売れないバンドマンが、恋人を連れて故

 

郷の島に帰り家族と過ごす、あるある映画だが、悲しいのに笑えるホームドラマに仕上がっている。

 

映画は架空の島、戸鼻島(とびじま)が舞台。呉市下蒲刈島など4島などオール広島ロケしたという。ち

 

なみに、広島の落語家、秋風亭定朝さん、ジャンボ衣笠さんも出演しています。

 

物語は、緑のモヒカン頭がウリ、だがまったく売れないバンドマン永吉(松田龍平)は、妊娠した恋人由

 

佳(前田敦子)を連れて故郷・戸鼻島へ7年ぶりに帰郷する。待っていたのは、矢沢永吉をこよなく愛す

 

るガンコ親父・治(柄本明)とカープ命の母・春子(もたいまさこ)とたまたま帰省していた弟・浩二(千葉雄

 

大)の家族3人。家族そろったところで、聞けばまともな仕事もせず、あい変わらずの永吉に親父の怒り

 

心頭、派手な喧嘩もそこそこに、長男「夫婦」のご帰還を祝う大宴会と相成る。その夜、親父が倒れると

 

いう予期せぬ出来事。病院に運ぶも検査結果は末期ガン。動揺する5人。さぁどうする。

 

余命宣告された修は、自らの死を悟り、家族のもとで往生する。この辺すこしドタバタが過ぎるが、よしと

 

しよう。痛む身体をおして父子で、墓参りする場面があるが、惜しい。ここで何か言ってほしい、自分と父

 

母のことなんでもいいのに。

 

ともかくも、広島てんこ盛りの広島ムービー、サロンシネマ他で上映中。

 

(OK)

 


 

 

家族つらいよ

 

 

 

2016年公開 日本映画 上映時間148  <予告篇>

 

 

監督:山田洋次  脚本:山田洋次 / 平松恵美子

 

 

出演:平田周造(橋爪功)/ 富子(吉行和子)/ 幸之助(西村雅彦)

 

   史枝(夏川結衣)/ 泰蔵(林家正蔵)/ 成子(中嶋朋子)

 

         庄太(妻夫木聡)/ 憲子(蒼井優)/かよ(風吹ジュン)/ 沼田(小林捻侍) 

 

劇場内に絶えず笑いが起こります。笑えない話なのについ笑ってしまう山田喜劇

 

満開です。東京の郊外で暮らす三世代同居の平田一家が物語の舞台です。

 

家長の周造は定年退職後も現役時代と同じように傍若無人、自由気ままに振る

 

舞っています。今日も仲間とゴルフを楽しんだ後、気立てのいい女将 かよが切り

 

盛りする小料理屋で酒を片手に、散々妻の悪口を言って盛り上がり上機嫌で帰宅

 

します。妻の富子はそんな夫を優しく迎え、周造が脱ぎ捨てた服や靴下を拾いな

 

がら着替えを手伝います。その時、ふと周造が寝室に飾られた花に気づき「その

 

花、どうしたんだ」と尋ねます。富子が「今日は私の誕生日。友だちからのプレ

 

ゼントよ」返事をします。妻の誕生日などすっかり忘れていた周造でしたが、

 

自分もたまにはプレントをしてやろうかと軽い調子で「何か欲しいものはない

 

か」と訊ねると、「あるわ。ここに判子が欲しいの」と言って富子が差し出した

 

のは、まさかの離婚届でした。“青天の霹靂”周造は突然の宣告に凍りついてし

 

まいます。一方の富子は涼しい顔で部屋を出ていきます。鮮やかな導入部です。

 

平田家の“離婚騒”はこうして幕を開け、家族中が狼狽し大騒ぎになっていく

 

のです。

 

山田監督がその掌に役者を置き、的確に動かして豊穣のカクテルを作り上げまし

 

た。出色は橋爪功です。思いもしなかった離婚話を突きつけられてもなお虚勢を

 

張り続ける年金男を自在に演じています。この映画の成功は優れた脚本をベース

 

にした山田演出と橋爪功の演技にあるといっても過言ではありません。

 

何かしら自分にも思い当たるシーンがいくつか出てきて思わず「そんなことある

 

ある」と相槌を打ってしまいます。個人的には〈うな重〉のその後も気になると

 

ころです。エンドマーク(終)の出し方も洒落ていてきっと小津安二郎監督も

 

彼の地で感心していると思います。山田監督だから小津作品をこんな風に使うこ

 

とができたのでしょう

 

「男はつらいよ」終了から約20年。山田洋次監督のホームグラウンドはやはり

 

喜劇映画なのだと再認識しました。              <紅孔雀> 


 

 

 キャ

 

 2015年製作 アメリカ映画 上映時間 158  <予告篇 

 監督:トッド・ヘインズ 

 出演:ケイト・ブランシェット(キャロル・エアード) 

 ルーニー・マーラ(テレーズ・ベリベット)/ サラ・ボールソン(アビー・ゲーハード) 

 

原作は太陽がいっぱいで知られるミステリー作家パトリシア・ハイスミスが彼女自身の体

験を基に1952年に出版し100万部を超える大ベストセラーとなった作品です。当時は“同性

愛”自体が法律で禁じられており、そのためハイスミスは別名で出版していました。そして30

年後に自らが執筆者であることを公表したのです。

1950年代ニューヨークが舞台です。ジャーナリストを夢見てマンハッタンにやって来たテ

レーズは、クリスマスシーズンのデパートで玩具販売員のアルバイトをしていました。彼女に

はリチャードという恋人がいたのですが、なかなか結婚に踏み切れずにいます。テレーズは、

娘へのプレゼントを探しに来たエレガントでミステリアスな女性キャロルにひと目で心を奪わ

れてしまいます。キャロルが手袋を置き忘れたことをきっかけに2人は会うようになり、テレー

ズはキャロルが夫と離婚訴訟中であることを知ります。生まれて初めて本当の恋をしていると

実感するテレーズは、キャロルから小旅行に誘われ、旅立つのですが・・・。

『ブルージャスミン』(アカデミー主演女優賞)のケイト・ブランシェットと本作でカンヌ国

際映画祭主演女優賞を受賞したルーニー・マーラの渾身の演技に注目です。『ドラゴン・タ

トゥーの女』で天才ハッカー リスベットを演じたルーニー・マーラが全く違う役柄を繊細に演

じ、凄みの増したケイト・ブランシェットと堂々と渡り合っています。この映画の素晴らしい

ところはファーストシーンから際立つケイト・ブランシェットの洗練された言動や所作、そし

て、どんなに切羽詰まっても自分に忠実であろうとする姿です。その清い姿が観るものに迫っ

てくるのです。性別の違いなどは瑣末なことに思えてきます。過不足ない演出、余韻を残した

ラストシーンもグッド。                    PG-12 <紅孔雀>