2013/7月掲載

「ベルリンファイル」「セデック・バレ」-2 「殺人の告白」-2 「さよなら渓谷」


(C) 2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved
(C) 2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved



ベルリファイ

 

2013年製作 韓国映画 上映時間 2h <予告篇>

   

   STAFF    

    監督・・・リュ・スンワン

    脚本・・・リュ・スンワン

    撮影・・・チェ・ヨンファン

    音楽・・・チョ・ヨンウク

         

         CAST

          チョン・ジンス・・・ハン・ソッキュ

          ピョ・ジョンソン・・ハ・ジョンウ

          トン・ミョンス・・・リュ・スンボム

          リョン・ジョンヒ・・チョン・ジヒョン

          リ・ハクス・・・・・イ・ギョンヨン

 

ドイツの首都ベルリン。韓国情報院の敏腕エージェント、チョン・ジンスがホテルの一室で行われている

 

武器取引の密談を隠しカメラで監視中のことです。ロシア人ブローカーを介してアラブ系組織の幹部に

 

新型ミサイルを売りつけようとしている北朝鮮の秘密工作員がいました。その男、ピョ・ジョンソンは、

 

CIAMI6のリストにも記録がない“ゴースト”と呼ぶべき謎の人物でした。ジンスは取引成立のタイミン

 

グを狙い、部下たちに現場への強行突入の指令を下しますが、イスラエルの情報機関モサドの横やりに

 

よって銃撃戦が勃発、ジンスはジョンソンを取り逃がしてしまいます。一方、北朝鮮で英雄と崇められる

 

ほど数多くの手柄を立ててきたジョンソンは、韓国側への情報漏洩に不安を抱き、内通者の存在を疑い始

 

めます。そんな中、在ベルリン北朝鮮大使館のリ・ハクス大使は、平壌から派遣されてきた保安観察員

 

トン・ミョンスから、大使館に勤める通訳官でジョンソンの妻リョン・ジョンヒが二重スパイだという

 

情報を入手します。上司であるハクスから妻の調査を命じられたジョンソンは、ショックを受けながらも

 

彼女への監視と尾行を開始します。その頃、ジンスも旧知のCIA局員から「北朝鮮の何者かが国連を通じ

 

て亡命を要請した」との情報を受けていました。妻を内偵中のジョンソンは自宅に盗聴器が設置されてい

 

ることに気付きます…。

 

北朝鮮、韓国、モサドそれにロシア、CIAのエージェントやブローカー、ヒットマンなどが入り乱れての

 

サスペンス映画です。スピード感充分で目まぐるしく場面が切り替わっていきます。ベルリン市街地を

 

使ってのロケを観ていると韓国映画の世界展開の意図が伝わってきます。カメラワークやアクション、

 

音響など世界に伍していこうとする高い志が新鮮です。残念ながら日本はこの分野では遠く置いていかれ

 

たようです。                     2013/7/17 シネツイン本通り <紅孔雀>

 

 


(C)2011 Central Motion Picture Corporation & ARS Film Production ALL RIGHTS RESERVED
(C)2011 Central Motion Picture Corporation & ARS Film Production ALL RIGHTS RESERVED


デッ

 

2013年日本公開 台湾映画

 

上映時間 第一部2h24  第二部212 <予告篇>


 

 STAFF

  監督・・・ウェイ・ダーション

  脚本・・・ウェイ・ダーション

  撮影・・・チン・ディンチャン

  音楽・・・リッキー・ホー

  

   

 

   CAST

    モーナ・ルダオ・・・・・・・・・・リン・チンタイ(晩年)・ ダーチン(青年時代)

    タイモ・ワリス・・・・・・・・・・マー・ジーシアン

    小島源治・・・・・・・・・・・・・安藤政信

    佐藤愛佑・・・・・・・・・・・・・木村祐一

    花岡一郎(ダッキス・ノービン)・・シュー・イーファン

    花岡二郎(ダッキス・ナウイ)・・・スー・ダー

    高山初子(オビン・タダオ)・・・・ビビアン・スー

    蒲田弥彦・・・・・・・・・・・・・河原さぶ

    小島マツノ・・・・・・・・・・・・田中千絵

 

日清戦争の結果、下関条約によって清朝(中国)から割譲された1895年(明治28年)から、第二次世界大

 

戦の結果ポツダム宣言によって中華民国に編入された1945年(昭和20年)まで日本は台湾を統治していま

 

した。この映画はその日本統治時代に起こった霧社事件を題材にしています。

 

 

霧社事件(むしゃじけん)

 

台湾の少数原住民族の抗日反乱事件。1930年(昭和5年)1027日、台中州能高郡霧社(現南投県仁愛

 

郷)一帯のタイヤル族6部落300余名が、マヘボ部落のモーナ・ルダオの指揮で一斉に蜂起し、警察官駐在

 

所を襲撃、ついで霧社公学校の運動会開催中を襲い、日本人134名を殺害した。台湾総督府は鎮圧のため

 

警察官ら2700余人を投入、台湾軍からも1000人以上が出動して、激しい掃討戦を繰り広げた。しかし反乱

 

側の士気はきわめて高く、統制もとれ、天険にたてこもって最後まで抵抗を続けた。日本軍の掃討戦には

 

大砲、機関銃、飛行機などが用いられ毒ガスも使われた疑いが濃い。蜂起の原因は、日常的な差別的待

 

遇、過酷な出役労働、低賃金と警察官によるその着服などへの不満が主であった。長期にわたる日本の強

 

圧的な民族政策で土地を失い、行動を制限されてきたことへの不満がその背景をなしていた。   

                            

                             [日本大百科全書(小学館)]より抜粋

ここでしか見られないと決意して、約5時間に挑戦。まったく長さを感じませんでした。

 

冒頭の若き頭目の躍動、急斜面の山の中を飛ぶように走るセデックの姿から圧倒されました。

 

霧社事件のことは、いつ知ったのだろうか?と思い起こすと、もちろん学校の日本史、世界史では習わな

 

かった。大学時代に読んだ五味川純平の小説、三一書房から新書版で順次出ていた「戦争と人間」の

 

か、だれかの書いた近現代史だったか?日本の台湾統治は、植民地にしたにもかかわらず、反発が少な

 

いかのように喧伝されて、あたかも近代化を応援したかのような言われ方もします。自己のアイデンティ

 

ティ、民族の根っこを取っ替えられることは、尊厳というか誇りを奪われること。虹の橋を渡るのか、

 

神社に入るのか、という問いかけが突き刺さります。よくも撮影できたと驚くような急峻な渓谷や密林内

 

での戦い、まるで今テレビで放映中の幕末の会津藩のような男女子供の玉砕的な戦いまで彷彿とさせま

 

す。出てくるセデック族らの顔つき、眼力が、役者ではない迫力です。昔に見た「ダンス・ウイズ・ウル

 

ヴズ」に登場した、本物のシャイアン族のチーフ・ダン・ジョージのように、頭目役の存在自体でその世

 

界に引き込まれました。(石)

  

一部「太陽旗」 第二部「虹の橋」を合わせて4時間36分の大長編です。まさに台湾映画界の総力を

 

結集した感があります。テロップで「史実に忠実に再現した」と出るように過剰なナショナリズムに走る

 

ことなく反乱側の内部矛盾や闘いに明け暮れる男たちに苦労させられる妻や子供たちの姿も描かれていま

 

す。当時の日本軍の服装や行動規範など不明な部分も多かったと思いますが忠実であろうとする姿に好感

 

が持てます。それにしても当時の原住民族には“捕虜”という選択肢は無かったようで部族間や対日本軍

 

の戦いではまさに殺すか殺されるの死闘を繰り広げます。とどめは「首切り」です。しかしことさら

 

クローズアップして見せることは無いので残酷感はそれほどではありません。CGを含め多少荒っぽい部

 

は散見されますがこの映画に賭けたスタッフ・キャストの熱意は痛いほど伝わってきます。頭目のモー

 

ナ・ルダオの晩年を演じたリン・チンタイは現役牧師ですし、若き日のモーナ・ルダオを演じたダーチン

 

はこの作品で俳優人生をスタートさせました。奥深い山中での撮影中、病人やけが人が絶えなかったそう

 

です。原住民役の俳優は裸足で走り回るのですから無理もありません。時折り挿入される踊りには不思議

 

な力強さと魅力があります。

 

日本側からも多くの俳優が参加しています。安藤政信・木村祐一そして「海角七号~」にも出演していた

 

田中千絵さらには河原さぶ、彼は〈蒲田〉という粗暴で瞬間湯沸し器的軍人役ですがラストでは詩的で何

 

かを悟ったような語り口になっていて苦笑させられます。更には祖母・母が原住民出身のビビアン・スー

 

も出演しています。この映画の製作資金が枯渇したときに彼女が個人的に出資したというエピソードがあ

 

ります。なぜ、この霧社事件を台湾が今この時期に映画化したのか考えずにはいられませんでした。

                             

                             2013/7/13 サロンシネマ <紅孔雀>

 


(C) 2012 DASEPO CLUB AND SHOWBOX / MEDIAPLEX ALL RIGHTS RESERVED.
(C) 2012 DASEPO CLUB AND SHOWBOX / MEDIAPLEX ALL RIGHTS RESERVED.

 

 

 

2012年製作 韓国映画 上映時間159 <予告篇>

 

      STAFF

       監督・・・チョン・ビョンギル

       脚本・・・チョン・ビョンギル

       撮影・・・キム・ギデ

       音楽・・・キム・ウグン

 

 

 CAST

  イ・ドゥソク・・・パク・シフ

  チェ・ヒョング・・チョン・ジェヨン

  ハン・ジス・・・・キム・ヨンエ

  ガンスク・・・・・チョ・ウンジ

  TV局長・・・・・ チャン・グアン

 

エンドマークにもお勧めなのと、いろいろな声を聞いたので、仕事を差し繰って見に行きました。

 

そう言えば、ちょっと前に韓国の連続殺人事件のニュースがあり、これでも死刑は停止のままか?みたい

 

な記事がありました。

 

どこの国でも、連続的、猟奇的殺人事件は、様々な映画の種ですよね。

 

元祖のイギリスの切り裂きジャックは幾つもの映画になってます。

 

 「悪魔のいけにえ」や「羊たちの沈黙」という別格をはじめ、「ドラゴンタトゥー・・」もそうですし、

 

見たことはないけれどホッケーフェイスの不死身のホラー映画も。

 

 韓国映画でも、ラストの土管を覗く刑事の顔の強烈な印象が残っている「殺人の追憶」や、この映画の

 

冒頭の凄い追いかけと不気味な連続殺人は「チェイサー」を彷彿とさせます。

 

雨と狭い路地、暗闇の中の追跡の場面の迫力は圧倒的ですが、告白者が出てきてからは映画のトーンがコ

 

ミカルな活劇風に変わり、少し戸惑います。 監督が活劇、スタントが得意だそうなので、最後のカーチェ

 

イスもサービス満点です。 ストーリーにはあれっ?と、少し無理がありますが、主人公の刑事の行動やラ

 

ストは、ある種のカタルシス、安堵感を感じさせます。

 

が、私はアメリカ映画風の終わり方よりも、「殺人の追憶」のように、見る者を突き放したような、宙ぶ

 

らりんにさせられた方が、闇の濃さと韓国独特の泥臭さがあっていいと思います。とはいえ、これは「好

 

み」ですので、少し若き頃の渡哲也を思わせる(黙っていればですが)主人公もクセがあって魅力的です

 

ので、よかったらどうぞ。(石)

 

 

 

ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」と同じ事件をモチーフにしています。その世間を騒がせた連続殺人事

 

から15年後、イ・ドゥソク(パク・シフ)という男が“私が犯人だ”と名乗り出ます。しかし時効成立の

 

め法的に無罪となり、彼は自分の犯した殺人事件について詳細に記した本を出版します。その衝撃的な

 

容と魅力的なルックスが相まって、マスコミに追いかけられ一躍時の人となり本もベストセラーになり

 

す。サイン会も盛況です。追っかけも現れます。しかし事件を担当してきた刑事や、恨みを抱く遺族た

 

が黙っていませんでした。不思議なことに本の中には最後の未解決失踪事件の真相が書かれていません

 

した。テレビでも大々的に取り上げられ、ずっと犯人を追いかけてきた刑事チェ・ヒョング(チョン・

 

ヨン)は、ドゥソクに向かって「おまえは嘘を書いて本を売った。詐欺罪で逮捕されるだろう」と言

 

い放ます。そんな中、自分こそが真犯人だと名乗る男<J>が現れるのです。やがて舞台はテレビ討論

 

会へ移り、衆人注目の中スタジオでイ・ドゥソクとチェ・ヒョングさらに<J>が対決します。その上

 

に被者遺族も加わって終盤へとなだれ込みます。しかし演出はしっかりしていて捌き方がうまいので混

 

乱すことはありません。

 

映画はいきなり派手な乱闘シーンからスタートします。小さな食堂の窓を破って二人の男が転がり込みま

 

す。それは15年前チェ・ヒョングが僅かなところで犯人を取り逃がしてしまうシーンです。雨が降ってい

 

ます。観客の興味を一気に惹きつけてしまう秀逸なファーストシーンです。大小取り混ぜての伏線の張り

 

方や時効の扱いも見事です。それに俳優の層の厚さや巧みさを感じさせます。これだけのシナリオだから

 

複数のライターが関わっているのかと思いきやクレジットされているのは監督兼任のチョン・ビョンギル

 

だけでした。細部に渡って綿密に計算されていて破綻はありません。充分な時間をかけて練り上げたこと

 

でしょう。ラストの車上でのアクションシーンやなかなかくたばらない真犯人なども新鮮です。ユーモア

 

のセンスもあり時折り挿入されるシーンによってこの映画が必要以上に陰湿になるのを防いでいます。

 

更に説明過多と冗長になるのを避けて短いカットでつないでいます。若干34歳のチョン・ビョンギル監督

 

素晴らしい才能です。韓国と日本の映画というものに対する位置付けの違いをつくづく感じさせてくれま

 

した。                           2013/7/6 サロンシネマ<紅孔雀>


(C) 2013「さよなら渓谷」製作委員会
(C) 2013「さよなら渓谷」製作委員会



よな

 

2013年製作 日本映画 上映時間153 <予告篇>



   STAFF

    監督・・・大森立嗣

    脚本・・・大森立嗣

         高田 亮

    撮影・・・大塚 亮

    音楽・・・平本正宏

      

                   CAST

                    尾崎かなこ・・・真木よう子

                    尾崎 俊介・・・大西 信満

                    渡辺 一彦・・・大森 南朋

                    小林 杏奈・・・鈴木 杏

吉田修一が「悪人」と同時期に書いた小説の映画化です。

 

舞台は都心から気軽に来られる景勝地として人気の高い「桂川渓谷」。この渓流にほど近いところに市営

 

団地があります。団地の住民、立花里美が「息子が帰ってこない」と交番に通報します。警察は誘拐事件

 

を視野に入れた捜索を開始しますが子供は遺体となって発見されます。やがて里美は幼児虐待で我が子を

 

殺めてしまったと自白します。そして隣家の俊介と不倫関係にあったとも証言。それを俊介の妻である

 

かなこ が認めます。俊介に殺人の嫌疑がかけられます。マスコミの取材合戦がお馴染みの傍若無人ぶりに

 

とヒートアップしていきます。俊介とかなこ夫婦に違和感を抱いた週刊誌記者の渡辺と小林はやがて俊介

 

の過去の犯罪にたどりつきます。15年前、俊介は「和東大学野球部集団レイプ事件」の加害者だったので

 

す。そしてその被害者が かなこ でした。レイプ事件の加害者と被害者がなぜ一緒に暮らしているのか

 

大いなる謎です。かなこは当時高校生でした。事件後、転校し息を潜めて暮らしてきました。

 

就職先で知り合った男性と婚約しますが過去を知られ破談になり、転職先で出会った彼には全てを話し

 

結婚しますが夫からのDVにあってしまうのです。一方、俊介は酒に酔っていた末の行為とはいえ犯した罪

 

の重さに苦しんでいました。だから、かなこ にとって唯一自分が優位に立てる相手は俊介だったのです。

 

二人が向き合えばどうしても過去から眼を逸らすことはできません。そして心の底に住みついた自虐とい

 

う名の不幸が共鳴し始めるのです。ありえない展開と思われがちですが、尼崎の事件でもなぜ逃げださず

 

に殺されてしまったのかと被害者の心理を不思議におもいます。他者からみれば理屈に合わない行為でも

 

当事者にしか分からない深層心理があるということでしょう。だからこの映画の演出、演技はとても難し

 

かったと思います。それらがうまくいっているかというと決してそうではありません。かなこを演じた

 

真木よう子も俊介役の大西信満もこの役を真に理解しているようにはみえません。表情の変化にも乏しく

 

大声で叫んだりアンニュイに佇んでいるだけでは二人の葛藤を私たちがすくい取ることはできません。

 

頑張っているのは分かりますが過去の重荷に苦しんでいる様にはみえないのです。それは演出の限界なの

 

かもしれません。その演出も復讐と贖罪が交錯した末に行きついた行為の(はずの)セックスシーンで

 

引っぱっていきます。奇をてらったようなのっけからの濡れ場には戸惑います。とはいえこの映画は例え

 

演出、演技が上手くいっていても分からない人にはどうやっても理解できないでしょうね。お互いが傷つ

 

けあい不幸になっていくことを求めている人生なんて。でも最後にほんの少しだけ展望が見えたような見

 

えないような・・・。

 

監督からの要請だそうですが真木よう子がエンディングで気怠げに歌う「幸先坂」(作詞・作/椎名林

 

檎)はこの映画を軽いものにしてしまいました。真木よう子本人が自覚しているのかどうか知りませんが

 

何だか便利に使われているような気がして仕方がありません。(R15+)です。

 

ちなみに真木よう子の出演作「そして父になる」(カンヌ国際映画祭審査員賞)が今年10月に公開されま

 

す。是枝監督が彼女をどのように演出しているか楽しみです。    2013/6/28バルト11<紅孔雀>