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「くちづけ」「ローマでアモーレ」「はじまりのみち」「オブリビオン」ー短評 

「奇跡のリンゴ」「箱入り息子の恋」「きっとうまくいく」

 
 (C) 2013「くちづけ」製作委員会
(C) 2013「くちづけ」製作委員会

 

くち

 

グループホームに一組の親子が、やってくる。パン工場で働く娘

 

(貫地谷しほり)と元漫画家(竹中直人)の父親。

 

そして、父親の寿命はわずか。泣くよね。映画としての出来はかな

 

りいい。大勢の登場人物を交通整理しなら、物語を進めていく

 

手腕はさすが。でも、ラスト父親が娘の首をしめて殺すんだよ。場内は涙涙で鼻水をすすり上げる音しか聞

 

えない。娘が知的障害だからといってこんなんでいいのか。今、僕自身が、知的障害者と仕事をしている

 

か、気付けば感動している自分が嫌になるよ。(安)

 (C) GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo by Philippe Antonello
(C) GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo by Philippe Antonello

 

ローマモー         

 

深夜のパリから古都・ローマへ―。男女が繰り広げる人間模様を

 

軽妙なタッチで描くロマンチック・コメディーだ。

 

娘がローマの男と結婚、その父親はオペラの演出家、

 

シャワーでオペラ、謎のコールガールも登場、

 

らには凡人が突然スターに…。まさに、ローマはすべてが

 

「物語」だ。豪華キャストも見もの。コロッセオやスペイン階段に加え、普段は訪れない路地裏など、

 

街の魅力にも酔いしれる。30年ぶりにローマに行たくなったな。(FU)

 (C) 2013「はじまりのみち」製作委員会
(C) 2013「はじまりのみち」製作委員会

 

はじみち

 

長編アニメ『河童のクゥと夏休み』で、その年の日本映画ベスト5

 

に選ばれた原恵一が脚本・監督した木下恵介生誕100年記念の

 

初実写映画。木下監督が作った『陸軍』が戦意高揚映画としては

 

女々しすぎるとの評価を受け映画界から身を引こうとしたくだり

 

などを、加瀬亮、田中裕子、ユウスケ・サンタマリアたちが情感

 

たっぷりに演じている。『二十四の瞳』のエピソードなど、映画ファンにはたまらないシーンがたっぷり盛り込

 

まれているのは、木下恵介監督を尊敬してやまない原監督の演出ならでは。(TO)

 (C) 2013 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
(C) 2013 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 

オブリビ

 

2077年、エイリアンによって壊滅した地球。全ての人類が土星

 

の衛星に移住した後、パートナーのヴィクトリアと共に監視を続け

 

るジャック。トム・クルーズが演じているのだから、もちろん不死

 

身。命綱が切れようが、撃たれようが死ぬことはない。

 

そのくらいなら西部劇にだってあるが、時は未来、おまけに記憶まで消されて任務に就いているから、

 

更に何でもありだ。どんな結末だってかまわないのだが、こんなオチなら何があっても死ぬわけがない。(みかん)


(C) 2013「奇跡のリンゴ」製作委員会
(C) 2013「奇跡のリンゴ」製作委員会

 

リン

 

2013年公開 日本映画 上映時間209 <予告篇>

 

 STAFF

  監督・・・中村義洋

  脚本・・・中村義洋

       吉田智子

  撮影・・・伊藤俊介

  音楽・・・久石譲

 

          CAST

           木村秋則・・・阿部サダヲ

            美栄子・・・菅野美穂

           木村征治・・・山崎努

           三上葺子・・・原田美枝子

木村秋則さんの実体験という絶対的な事実があります。その事実を知っているからそれなりに感動はします。

 

妻が農薬に弱く散布時期には必ずと言っていいほど体調を崩してきました。そのために秋則はリンゴの無農薬

 

決意するのです。その取り組みは10年の長きに渡ります。毎年のように病害虫にやられ続けます。追いつめ

 

自殺も考えます。そんな苦労の末にやっと11年目の春にリンゴの花が咲くのです。

 

これは皆さんが良く知っている事実です。だからといってその事実を描いたら感動するかといったらそれはあり

 

ません。この映画には掘り下げた痛切がないのです。金もなく、土地も半分差し押さえられ、電気は止められ、

 

車も売り払い、まさに八方ふさがり、極貧です。それでも家族の支えで無農薬栽培を続けていくのですが、

 

そこでの葛藤もおざなりです。脚本と演出が事実を我がものとして消化できずに回りをウロウロしているだけな

 

です。別の言い方をすれば、あれもこれも取り込んだために物語が表層的になってしまっているのです。

 

いかにもテレビ的です。かって山田洋次監督が映画「学校」を作る時、シナリオ製作に10数年も試行錯誤した

 

結果、舞台となる夜間中学校で取材したエピソードの多くを捨て、たった一日の授業の中に集約することによっ

 

て完成させたようにポイトになるエピソードをもっと掘り下げるべきでした。音楽も例外ではありません。

 

「七人の侍」や「幸福の黄色ハンカチ」でのクライマックスシーンの音楽は感動をいやが上にも高めてくれま

 

した。この作品のクライマックシーンは11年目に咲いたリンゴの花を夫婦で目撃する場面ですがカメラはずっ

 

と夫婦の表情だけを写し続け観を焦らします。少し、イラつき始めたころにカメラがパンしてリンゴの花を写

 

すのですが、そのときの音楽は実平凡で少しも映像の助けになっていません。この映画が全くのフィクション

 

だったら少しも感動しないでしう。それなりにでも感動するのは事実の助けがあるからなのです。

                             

                                 2013/6/22 バルト11 <紅孔雀>


(C) 2013「箱入り息子の恋」製作委員会
(C) 2013「箱入り息子の恋」製作委員会

 

 箱入息子

 

     2013年製作 日本映画 上映時間 157 

    <予告篇>

 

     STAFF

      監督・・・市井昌秀

      脚本・・・市井昌秀

           田村孝裕

      撮影・・・相馬大輔

      音楽・・・高田漣

                           CAST

                            天雫健太郎・・・星野源

                            今井奈穂子・・・夏帆

                            天雫寿男・・・・平泉成

                            天雫フミ・・・・森山良子

                            今井晃・・・・・大杉連

                            今井玲子・・・・黒木瞳

主人公の天雫健太郎(あまのしずく・けんたろう/星野源)は、生まれてこのかた女の子と付き合ったことがない 

35歳の童貞男です。自宅と勤め先の市役所を歩いて通勤する毎日で、昼食は自宅に帰って食べています

唯一の友達はペットのカエルだけ。休日はテレビに向かってゲーム三昧です。挙句の果てに父親に「健太郎おまえ

ホモなのか」と聞かれる始末です。息子の様子をみかねた寿男(平泉成)とフミ(森山 良子)はついに

婚活を開始、親同士の代理見合いで今井夫婦と知り合います。社長として辣腕をふるう今井晃大杉漣)と

玲子(黒木瞳)の一人娘、奈穂子(夏帆)は8歳の頃に病気 にかかり、今ではまったく目が見えません。

そんな2人がお見合いをする前に、偶然街角で出会います。雨宿りをしていた奈穂子を見かけた健太郎が勇気を

出して傘を渡すのです。天雫家と今井家の見合いで晃は健太郎のことが気に入らず暴言を投げつけます。

そんな晃に、健太郎が絞り出すような声で「あなたは人に面と向かって笑われたことがありますか?」と問いかけ

るのです。やがて健太郎と奈穂子は、玲子の手引きで密かにデートを重ねて愛を育んでいきます。

それはこわれ物を扱うような繊細さで、少し痛々しくもあるひと時です。誰かを愛することによってどれだけ人が

強くなれるのかが本作の 大きなテーマでもあります。健太郎が奈穂子に不器用な仕草で傘を差し出すシーンや

二人で入った吉野家で奈穂子が左利きなのを知って健太郎が右側に席を替わるシーンなどはほのぼのとさせてくれ

ます。更に夏帆の視覚障害者としての演技には感心します。しかし、奈穂子の父親の性格形成には大きな疑問が

あります。物語の構成上悪役を作る必要があったのでしょうが、見合い相手に唐突に「出世意欲が無い」とか

「親族に障害者はいるのか」などと聞き「それでは娘の面倒は見られない」などと上から目線で言い放ちます。

それまでの流れからしていかにも唐突です。父と娘の語らいや心情の吐露といったシーンは皆無ですし肝心の娘

の気持ちに寄り添った視点が決定的に欠落しているのです。長い間悩んできたはずの結果がそれなのかと思ってし

まいます。演出の工夫でどうにでもなったはずですが、父親のこの姿勢は終始変わることはありません。

こんなことでよく父親が務まってきたなとその価値観を疑います。この作品は全体としては爽やかで喜劇的に演出

されています。ラスト近くで奈穂子が白杖を持ち一人で吉野家に入っていくシーンなどいい場面も多くあります

が、それだけに大杉漣の違和感がラストまで拭えませんでした。     2013/6/15 バルト11 <紅孔雀>

余談ですがネット上での高評価には多分にステマ的なものを感じます。

 

<ステマ>ステルスマーケティングの略

意味 消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること。

 
(C) Vinod Chopra Films Pvt Ltd 2009. All rights reserved
(C) Vinod Chopra Films Pvt Ltd 2009. All rights reserved

 

きっとうまくいく

2009年製作 インド映画 上映時間250 <予告篇

 STAFF

  監督・・・ラージクマール・ヒラニ

  脚本・・・ラージクマール・ヒラニ

        アビジット・ジョン

                             CAST

                              ランチョー・・・アーミル・カーン

                              ピア・・・・・・カリーナ・カブール

                              ファルハーン・・R ・マーダバン

                              ラジュー・・・・シャルマン・ジョーシー

                              チャトル・・・・オーミ・バイディヤ

お好み焼きの<そば・肉・卵 のダブル>を食べた後のような気分になります。ボリュームたっぷりで満腹感に浸れ

ます。でも消化がいいので、もたれません。とにかく演出・シナリオ・役者が「観客を喜ばせよう」に、最大の

ネルギーを注いでこの映画を作り上げたことが良くわかります。呆れるぐらいのサービス精神にあふれています。

長尺ですが明るく、楽しく、そしてスパイスたっぷりの極上のエンターテインメント映画で飽きさせません。

インドの理工系男子学生の青春グラフィティー映画です。主演のチョット見、トム・ハンクス似のアーミル・カー

(ランチョー)はプロデューサーとしても活躍する“ボリウッド”の大スターです。

インド人の年齢は良くわかりませんが彼は今年48歳です。それが楽々と違和感なく大学生役をこなしているのです

から恐れ入ります。映画は大学卒業の10年後からスタートします。行方知れずだった親友ランチョー(アミール・

カーン)が戻ってくるという連絡を受けたファルハーン(R.マーダバン)は、大学時代の親友ラージュー(シャル

マン・ジョーシー)とともに、母校の大学給水塔に駆けつけます。しかしそこにいたのは、同級生のチャトル

(オーミ・バイディヤ)でした。チャトルはランチョーを目の敵にしていた男でした。彼らの母校は名門工科大学

ICEで、超難関の受験競争を勝ち抜いたエリートたちが集まる大学です。自由な発想で異彩を放つランチョーと

同じ部屋の寮生だったファルハーンとラージューは鬼学長に目をつけられる問題児だったのです。競争に背を向

け、好きなことをして青春時代を謳歌した3人でしたが、ランチョーは今どこにいるのか。彼が姿を消した理由が

明かさ と・・・。

親の言いつけどおりに進学し、就職する。学校ではひたすらいい点数を取るために暗記に精を出す。チャトルへの

シニカルな眼は痛烈ですし、その様子はどこかの国にもそのまま当てはまります。ランチョーの「好きでもないこ

とをして自分を裏切ると50年後に後悔するぞ」に背中を押されたファルハーンとラジューが見事、親と学校の

”期待”を「裏切り」自らの求める道へと進んでいく様はスカッとして感動的です。

そして、ラストでランチョーの理想の萌芽が始まる“ある場所”へみんなが吸い寄せられるように集まるのです。

この映画が全国で支持されているのは、学歴偏重社会を痛罵しつつ、”チョー面白い娯楽映画”に仕上げているから

なのです。

サロンシネマでの上映が終了後、6/15日より八丁座で上映されます。    (2013/6/8  紅孔雀)