2013/10月掲載

「トランス」「R100」「大統領の料理人」「クロワッサンで朝食を」-2「25年目の弦楽四重奏」

「あの頃、君を追いかけた」


(C) 2013 Twentieth Century Fox
(C) 2013 Twentieth Century Fox

 

ンス

 

分かったようで、よく分からない映画だった。失った「記憶」の中に入りこむのだから、所詮、分かれと言う方が無理なのかも知れない。だが、そこは、あの鬼才ダニー・ボイル監督だけあって、映像の中にグイグイと引きこまれる。あの『トレインスポッティング』を彷彿させる。ちなみに「トランス」とは、催眠療法のこと。この催眠療法を使って、失った絵画の記憶場所を取り戻そうとするのだが…。「記憶」と「現実」のスパイラルを、ある意味で堪能できた。       たまご焼き

 

(C) 吉本興業株式会社
(C) 吉本興業株式会社

 

100

 

 嫌なものを見た。この一言に尽きるんだが、それでは、行数が埋まらないので、仕方なく。秘密のSMクラブに入会した男のはなし。女王様が突然、どこからか現れ、男をいたぶる。街中、職場、家庭、所を選ばず。予告の寺島しのぶを見ただけでウンザリしたけど。いや、ほんと出演俳優のギャラだけでもすごそう。もったいない。いいわるい以前に、生理的嫌悪感しか与えない。たぶん、松本人志が面白いと思う物と観客の間に深い溝があるんだろう。松本というより吉本は映画作りから手を引いたほうがいいと思うよ。

                                             ウーロン茶                     

 

Les Saveurs du Palais (C) 2012 - Armoda Films - Vendome Production - Wild Bunch - France 2 Cinema
Les Saveurs du Palais (C) 2012 - Armoda Films - Vendome Production - Wild Bunch - France 2 Cinema

 

領の料理人

 

ミッテラン大統領のプライベートキッチンを2年間任された、実在の女性シェフの話。華美な装飾を排し、素材を活かした料理を食べたいという大統領を、彼女は大いに満足させた。そして、彼女が次に選んだ職場、南極の基地でも、彼女の料理は隊員たちを魅了した。画面に次々と映し出される料理の数々は、私の胃袋も刺激した。映画そのものも、過剰な演出を避け、世界中にフランス料理を普及した、行動力ある女性とその料理という、素材を活かした作品になっている。    みかん

 

(C) TS Productions - Amrion Ou - La Parti Production - 2012
(C) TS Productions - Amrion Ou - La Parti Production - 2012

 

クロワッサン

 

朝食

 

 

バルト三国の一つ、エストニア出身のイルマル・ラーグ監督の母をモデルにした実話の映画化。花の都パリを舞台に、エストニアから出てきたばかりの主人公アンヌと、彼女を家政婦として雇う高級アパルトマンで暮らす老婦人フリーダ。毒舌家で気難しいフリーダも実はエストニア出身だった。自前のシャネルファッションに身を包むフリーダ役の名女優、ジャンヌ・モローのおしゃれで粋なパリジェンヌの暮らしぶりが素敵!今を懸命に生きる女性必見の映画。      麦酒

 


(C) TS Productions - Amrion Ou - La Parti Production - 2012
(C) TS Productions - Amrion Ou - La Parti Production - 2012

 

クロワッサン

     朝食を 

 

2013年日本公開 フランス・エストニア・ベルギー合作

上映時間 135 <予告篇> 

 

STAFF

 監督・・・イルマル・ラーグ

 脚本・・・イルマル・ラーグ

       アニエス・フォーブル          CAST

      リーズ・マシュブフ            フリーダ・・・ジャンヌ・モロー

 撮影・・・ロラン・ブルネ            アンヌ・・・・ライネ・マギ

 音楽・・・デズ・モナ              ステファン・・パトリック・ピノー

 

エストニアで結婚と離婚を経験、子育てと母の看病に追われながら既に人生も半ばを過ぎてしまったアンヌ。

 

やがて母を看取りますが、それと引き換えに孤独な日々が訪れます。子どもたちは既に独り立ち、遠くで暮らし

 

ています。そんなアンヌにある日、パリで家政婦として働く仕事が舞い込んできます。フランス語も少しは

 

喋れます。アンヌは悲しみを振り切るように、若い頃から憧れていたパリへ旅立ちます。

 

彼女を待ち受けていたのは、エストニア出身で高級アパルトマンに独りで暮らす毒舌で気難しい老婦人フリーダ

 

でした。フリーダはアンヌを歓迎するどころか、「おいしいクロワッサンの買い方も知らない」と、冷たく

 

追い返そうとします。実はアンヌを雇ったのは、近くでカフェを経営するステファンで、フリーダは家政婦など

 

求めてはいなかったのです。ステファンはフリーダの肉親ではありません。しかし年老いたフリーダを気にかけ

 

ているのです。次第にステファンとフリーダの関係が明らかになります。ステファンがカフェを持てたのも

 

フリーダの援助があったからなのです。アンヌの献身的な世話によってフリーダとの距離が縮まり一緒に街に

 

出かけるようになります。そんな中、アンヌはある新聞記事を見つけ、フリーダの孤独な生活を癒そうとします

 

が、その事が逆にフリーダの秘密を知ることになります。

 

エストニアは監督の出身国でもあり帝政ロシア、ソビエト、ナチス・ドイツ、そして再びソビエトに侵略されな

 

がらも、自らの言語、文化を守りぬいた国です。そのしなやかな粘り強さをアンヌが体現しています。

 

夜、フリーダの就寝を見届けてから人通りのなくなったパリの街をあてもなくアンヌが散策します。

 

そこにあるのは憧れていた華やかなパリではありません。後ろ姿がアンヌの孤独を際立たせます。

 

老醜を晒してもなお気高く誇りを持ち、生きながらえるフリーダを85歳ジャンヌ・モローが圧倒的な演技でみせて

 

くれます。                        2013/10/19 シネツイン新天地 <紅孔雀>


 

25年目の

  弦楽四重奏 

 

2012年製作 アメリカ映画 上映時間 1h46

            <予告篇> R15+

 

STAFF                           CAST                     

 監督・・・ヤーロン・ジルバーマン            ロバート・ゲルバート・・・・・フィリップ・シーモア・ホフマン

 脚本・・・ヤーロン・ジルバーマン            ピーター・ミッチェル・・・・・・クリストファ・ウォーケン

 撮影・・・フレデリック・エルムス             ジュリエット・ゲルバート・・・キャサリン・キーナー

 音楽・・・アンジェロ・バダラメンティ           ダニエル・ラーナー・・・・・・・マーク・イバニール                      

 

 長年の友情と同じ志で築き上げてきたはずの世界的弦楽四重奏団<フーガ>。その楽団の父とも言うべき

 

チェリストのピーターがパーキンソン病に罹っていることが判ります。折しも創設25年目の記念の公演で

ベートーベンの名曲「弦楽四重奏曲第14番」を演奏することを決めリハーサルを開始したところでした。

ピーターはこのコンサートを最後に引退することを皆に伝えます。絶妙なバランスによって保たれてきた

人間関係の扇の要が外れ不協和音が始まります。夫婦、友人、母娘 狭い人間関係を濃密に描いて飽きさせ

ません。派手なアクションも目を見張るCGも登場しない作品ですが、「この波乱は、この先どう収拾するの

だろうか」と先が見通せなくなります。思いがけない人物と人物がつながり「まさか」と思わせます。

別れがもたらす悲しみ、そして“大切なもの”が浮かび上がってきます。クラシックの名曲の演奏を重厚で

リアルな演技で魅せ、私生活の場面では軽妙で人間的弱さを、卓越した演技で見せてくれます。

そのギャップがまた面白いのです。それはひとえにクリストファー・ウォーケン、フィリップ・シーモ

ア・ホフマン、キャサリン・キーナー、マーク・イバニールの力量によるものです。

とりわけクリストファー・ウォーケンの演技は特筆ものです。彼の印象は暗い、あるいは悪役のイメージなの

ですがこの映画では声を荒げることもなく静かに病を受け入れるリーダーの役を、押さえた演技でみせてくれ

ます。私はこんなクリストファー・ウォーケンを今まで見たことがありません。

なお俳優たちには、それぞれ2人のコーチがついて弓の持ち方や弦の押さえ方、楽器を持つときの動きなどを

徹底的に指導したそうですがフィリップ・シーモア・ホフマンのコーチはニューヨークを拠点に活躍する

岩田ななえと徳永慶子の2人の日本人バイオリニストが務めました。

                             2013/10/12 シネツイン新天地<紅孔雀>


(C)Sony Music Entertainment Taiwan Ltd.
(C)Sony Music Entertainment Taiwan Ltd.

 

あの頃、

  いかけた

 

2011年製作 台湾映画 上映時間 150 <予告篇>

 

STAFF

 監督・・・ギデンズ・コー

 脚本・・・ギデンズ・コー

 撮影・・・ジョウ・イ―シェン

 音楽・・・ジェイミー・シュエ

      クリス・ホウ 

 

                      CAST

                      コー・チントン/コートン・・・ クー・チェンドン

                      シェン・チアイー・・・・・・ ミシェル・チェン

                      シエ・ミンハ・・・・・・・・・スティーブン・ハオ

                      ツァオ・グオション・・・・・・ジュアン・ハオチュエン

                      シュー・ボーチュン・・・・・・イエン・ションユー

                      リャオ・インホン・・・・・・・ツァイ・チャンシエン

                      フー・チアウェイ・・・・・・・フー・チアウェイ

 

 2011年の台湾映画。ほぼ無名のキャストばかりですが、社会現象を巻き起こす大ヒットをとばし、

 

同年、東京国際映画祭での上映でも評判になった作品です。

 

台湾版青春グラフティともいえるほろ苦くそして誰もが思い当たる懐かしさで優しく包み込んだ映画です。

 

台湾中西部の町、彰化(しょうか)。コートンら男5人とシェンとフーの女2人は高級中学(日本の高校)で

 

同じクラスの仲間です。

 

物語はコートンとシェンを中心に語られていきます。男の子たちの頭の中はHなことでいっぱい。

 

将来のことを真剣に考えたこともない高校生コートンら、五人の個性豊かな仲間たちは、いつもつるんでいて

 

 持て余した時間をくだらない悪戯でつぶす毎日です。ある日、コートンは男気を出し、困っていたシェンを

 

助けます。シェンの恋心にほのかな火がともります。シェンは学校一の秀才です。コートンに勉強を教えて

 

バカから卒業させようと宿題を出し続けるのです。余計なお世話です。はじめは鬱陶しく思っていたコートンも

 

次第にシェンを好きになり、やる気を出し成績も上がっていきます。しかし、二人の価値観が全く違うのです。

 

コートンはしばしば馬鹿な行動に走りますがそれは彼にとっては生きている証しなのです。

 

シェンには理解できません。彼女は勉強一筋それしかありません。しかし、コートンにとって学校での勉強は

 

彼の人生のほんの一部でしかないのです。ひょっとしたら一部ですらないのかもしれません。

 

もそも、二人の器の容量が違うのです。だからシェンの小さな器は直ぐに一杯になってあふれてしまいま

 

すが、コートンのそれは余裕十分です。「女の子は早く大人になる。それに男は追いつけない」とコートンの

 

ナレーションが被ります。

 

誰の心にもある、あの頃を切り取り記憶に残る青春映画を誕生させたのは、ギデンズ・コー。

 

細かなところまで神経が行き届き長編映画 初監督とは思えぬ手腕を見せてくれます。良く練られた脚本と

 

気のきいたセリフ。若者たちの生きざま、価値観の違いが程良いスパイスを利かせて繰り広げられます。

 

公衆電話が携帯電話に変わり時代は移っても、相変わらずバカをやって進む道は違ってもやはり仲間はいいもの

 

だ。不器用でじれったい―これは珠玉の青春グラフティです。

                               2013/10/8 サロンシネマ <紅孔雀>